「とにかくあのジープに乗ってください。お話しは後ほ どさせて頂きます。」
男はカーキ色の旧式のジープを指差して言った。運転手 らしき別の男も既に乗り込んでいた。 身体に突き刺さるような日差しは、明らかに生まれて初 めて見る色をしていた。 |
「しまったっ! 見つかった! 伏せてっ!」
轟音とともに地面に叩きつけられた。爆風が過ぎ去った 後、背後にあったはずの小屋の残骸が頭の上にばらばら と降ってきた。 「早く、車へっ!」 助け起こされて、車に乗せられた。 目の前で、運転手がロケットランチャーを発射した。 頭上で巨大な火花が散ったが、そのときにはもう、ジー プは走り出していた。 |
「な、なんなのよこれ!本当に死ぬかと思ったわ!一体 何が起こってるの?説明して!ここはどこ?なんで私が こんな砂漠にいるの?あなたは何者?」
女は続けてまくし立てた。 「これからどこへ行くの?そこには何が待ってるの?も う何がなんだか・・・」 男は女が左手に負った数か所の切り傷に消毒薬を当てな がら、ヒステリックに浴びせられた質問を無視して言っ た。 「立派なおとなの女性になられましたねぇ。三輪車に乗 っていらした頃以来です。お母様のお若い頃にそっくり ですよ。」 |
「母は先月から行方不明よ」
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その言葉にフードの男は顔を上げた。初めてフードから 覗く男の顔、
自分の幼い頃を語る人物にしては、あまりにも若すぎた 。 |
「あなた、父の仲間?」
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「お父様の弟子でした。あの事件が起こるまでは・・・ 」
独り言のように、男は遠くを見つめるような眼でそうつ ぶやいた。 |
「わたし、父とは会ったことがないのよ。知ってるんで しょう?」
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「実は・・・ 何度かお会いになられています。」
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「…どうでもいいけど。
わたし、父となんか会う気はないから。 いまさら、何よ」 |
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